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スペースギア エンジンかからず

平成15年式三菱デリカスペースギア(PD6W)、エンジンかからずにて入庫です。

メイン電源(IG等)の電源はON、セルモータにてクランキングも行うも、

エンジンがかからないという症状。

 

 

予め不具合内容等は電話にて確認できていたのですが、エンジンルーム内のヒューズボックスを確認してみたところ、エンジン、インタークーラーの電源系統のヒユーズブロック(20A)

がすでに切れていました。

 

再度、ヒューズブロック交換にてIGON、瞬間的にヒューズブロックが切れてしまいました。 

どうやら、この系統の電源ラインのどこかでショートしている様子。

 

 

ヒューズボックスの上ふたに記載がある(ふた中央に記載、20Aエンジン、インタークーラーファン)ブロックヒューズ(青色)が切れる。

 

現段階では、この系統がエンジンコントロールと関連し、

燃料噴射や点火ができていないと思われます。

 

 

図面の手配と同時に、目視にてヒューズボックス周りから点検を開始します。

エアクリーナを取り外し、ヒューズボックスを手前まで取出し、

ショート回路点検ハーネスを差し込みます。

 

図面から配線系統の流れを確認、それぞれのポイントを定めて点検を行います。

今回のヒューズブロック(20A)の下側にはおおまかに分けてインタークーラーファン、エンジンコントロール、AT系統と3つにわかれているようです。

 

この車両にはインタークーラーファンは装着されていないので、残る2系統ですが、

さらに下側にさがるにつれて配線も分岐していき、相当の箇所が点検ポイント

となってしまいます。

 

このような場合、上(電源側)から順に配線を追っかけ、

分岐ポイントやリレー等の箇所から調べていくことになります。

 

そして最初のポイントを確認できたら、図面をもとに本当にその配線が図面どおりになっているのか、直接ヒューズボックス内の端子とそのポイントが導通しているのか、別系統にて配線をひき

その間の導通を見ます。 導通があれば、その配線は図面どおりであることがわかりました。

 

なぜ、わざわざそのように配線をひいてまで確認するかというと、図面はあくまで参考であり、必ずそのとおりになっているとは限らないのです。 それは、車両年式やグレード等のほか、同じ型式であっても、マイナーチェンジ前後での仕様変更がある場合があって、切り替えのタイミングがずれて記載通りの配線系統や配線色でない場合が多々あります。 配線点検は目に見えない分、確実に対象の配線が修理対象のヒューズブロックの系統なのかを知ることはとても重要なことなのです。 見込みで先にすすんでいってしまったら、あとで必ずつじつまが合わなくなり、

混乱してしまい、どの配線がなんだったのか、どういう状態なのかわからなくなってしまいます。

配線点検を行ううえでは、上側からにそって確実に配線を把握することが鉄則になります。

 

 

ここでは3系統のわかれ、内2本がエンジンコントロールリレーの接点側とソレノイド側とに入っていっていました。まずは、リレーの2系統と他1本の切り分けを行い、先にすすんでいきます。

 

調べ方については純正カプラーから切り離し、点検用配線を割り込ませ、1本ずつ回路を切り離しながら、ショートさせていきます。 切り離した配線のときにショートしなければその系統であることがわかります。

 

結果、リレーの接点側に問題があることがわかりましたが、

その先はさらに3系統にわかれていました。

配線の分岐ポイントにて切り分けが出来ても、下側に進むにつれて、どんどん枝分かれしていき、

集中力が途切れると本当に混乱してしまいます。

 

 

さらに先にすすんでいくと、3系統のうち2本が独立してECU(エンジンコンピューター)

に入力されていました。 もう一本はエンジンルーム側へ行き、

その先はクランク角センサーにいっているようです。 

 

ところがここで少し考えさせられる事案が発生しました。

ECUに入力されている2系統の配線を順番に切り離しショートさせてみるも、まだショートはしています。 なら、もう1本の系統だと思うのは早計で、この2本系統からECU内部への回路の問題も捨てきれないわけです。 つまり、ECUを起動させてはじめて不具合が起きるのなら、まだ3系統から絞りきることはできないわけです。 

 

ECUにはメイン電源のほか、様々な電源が様々な電圧にて入力され、また様々な条件において、

各種信号が入出力されているのですから、まともに点検していくのはほぼ不可能に思われます。

どこまでの条件下で、正しい点検が出来るのか、まったく想像が出来ない中、気を取り直していくしか他ありません。 まずはECUのカプラー(数十本もの配線が集中するカプラーが4つ、配線数にしておよそ150本ほど)を1個ずつ取り外していき、導通やショートを見ていきます。

 

幸いにして2つのカプラーが関係していることまで絞込みできました。

その配線数にしておよそ60本ほど。 結果、この60本のどれか数本が関係しているのは確かですが、ECUとの動作とからめて考えなければならず、あわせて先の3系統のうちクランク角センサーの配線も同時に考慮する必要が出てきました。

 

どういうことかというと、確かに2個のカプラーを抜くとショートしなくなるので、単純にECUの不具合と考えられるのですが、ことはそう簡単ではないようです。

配線を確実に1本ずつ見ていければ、ある程度の予測はなりたつのですが、

なにしろ1個のカプラーに数十本の配線が入っているのですから、どの配線がオープン(開回路)したのか、それによってどう動作するのかまったくわからない状態なので、ECUとは断言できないわけです。 図面上では、クランク角センサー配線のほか、クランク角センサーそのものが

モジュール化(数個の部品から構成されパッケージ化された部品の集合体)されていて、

トランジスタ回路のベース電流回路がECUから出力されており、当然ECUが起動した際に出力されるはずですから、ECU起動後どのタイミングでどのように電流、電圧が流れていくのかを把握しなければならず、これ以上は配線を切り分けできない状態になってしまいました。

 

 

ECU本体の可能性もあるのなら、内部の目視点検も重要です。

ショートするということは、どこかが焼けている可能性があるからです。

実際、見てわかる不具合も過去にいくつかあったからですが、

今回は目視でわかるものではありませんでした。

 

同じECUがあれば、このタイミングで差し替え交換して、確認もできるのですが(それはそれで大変危険でもあります。もしECU以外に原因があったなら、差し替えの瞬間にECUが破損することも考えられます)

 

 

もう一度図面をみて、配線の流れを再確認します。

先の3系統だけであればこの3枚でたりますが、ECUの2個のカプラー分を調べるとなると、

何枚の図面になることやら。

 

ここらへんで、相当弱気になってしまいます。

本当に直るんだべか。もう直せないんじゃないだろうか。

 

改めて気を取り直し考えるに、ここでとるべき方法は3つと思われます。

1つはECU回路ふくめて、配線を1本ずつみていくわけですが、それはもう時間を読むことはできませんし、膨大な作業量と点検工数になってしまいます。

2つ目にECUを見込みで交換すること。

これをすれば、確実(本当しそういい切れることもないが)にECUか他の系統かの切り分けはできるものの、ECUを交換してショートしたらそれはもう、がっかりです。

そしてもうひとつは、ECUからいったん離れて、すなわちクランク角センサー系統を調べていく方法です。基盤を眺めてみても、目視上の不具合もなく、そう簡単にECUがこわれる可能性は過去の経験からも非常に少ないことから、ヤマをかける価値はありそうです。

 

 

エンジン中央上部に設置されていた、クランク角センサーモジュールのカプラをみつけましたので、カプラを抜きショートさせてみたところ、「あれ?」ショートが止まったじゃありませんか。

もう一度カプラを差込みショートさせると、ショートする。 間違いない、この系統に違いありません。 でも、まだ安心できません。万一クランク角センサーモジュールなら、それを交換するのも、至難の業なのですから。 

 

 

配線を引き出してみたところ、原因がありました。

配線がエンジンブロックと摩擦し、擦り切れていたようです。

 

 

画像中央、ボルト近辺の黄色にペイントされた付近に接触していた。

 

 

ようやく安心して、次の作業にかかれました。

配線の修復を行います。 はんだにてがっちり結線していきます。

 

 

もう2度と干渉しないよう、配線をコルゲートチューブにて養生し、

さらに配線を余裕もたせたひき方に変更していきます。

 

 

ほぼ同じラインに別配線があり、ここも予防整備にてコルゲートチューブで養生し、

配線をバイパスしていきます。

 

 

なんとかうまく配線を治めることが出来ました。

エンジンのゆれを考えて、配線自体のゆとりをもたせてあります。

 

 

今回の不具合原因はこちら、

配線の干渉による、擦り切れです。

たったこれだけで、エンジンがかからなくなってしまうのですね。

そしてこれを見つけるのに、様々な理論を考えて、順を追って配線を見ていくわけですが

この作業は宝探しにも等しく、原因を見つけたときは本当に安堵するものです。

 

電装整備の王道を行く配線点検と配線修理にはまた、格別な醍醐味がありますが

それは手順に従って確実に、電気の流れを推測しながら点検していくからこそ、

得られるものでもあります。 ひとつひとつ根拠を探しながら進むと、大体において

原因にたどり着くことが出来るのですから。