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タウンエース 集中ドアロック取付

平成30年式 トヨタタウンエースに、キーレスとパワーウインドウキットの取付にて入庫です。

 

キーレスは運転席側にアクチュエーターが装着されていないので、あわせて一緒に取付をします。

そして、パワーウインドウキットも一緒なので、これはなかなかやり応えのある仕事になりそうですが、

じっくり作業をすすめていきましょうか。

 

 

この自動車はハイエースやキャラバンクラスよりも小柄でいながら、

積載量もあり、大きさもちょうどよく、街中でのお仕事には、なかなかよさそうですね。

 

 

運転席側ドアの、作業前の様子。

窓をあけるのに、くるくるまわすレバーハンドルが装着されていますが、

今回のオーダーは、これを電動化するものです。

 

 

そして、この手の取付作業は、予め車両のドア内部を確認し、寸法や構造を見てみなければなりません。

 

ドアの厚み、ウインドウレギュレーターとの隙間、モーターの取り付け位置、

ドア内装パネルとドア内の隙間等、確認すべきことがいくつかあります。

これらをクリアできないと、きれいに装着ができないため、慎重に見極めしていきます。

 

確認の結果、今回の車両では、なんとか取付スペースを確保できそうです。

 

 

取付するパワーウインドウキットは汎用型で、コムエンタープライズ社の製品です。

構成部品自体はシンプルなのですが、実際、モーターやスイッチを装着するとなると、

なかなか大変なものがあります。

 

 

こちらはキーレスキットで、同社製品です。

 

 

運転席側用のドアロックアクチュエーター(ドアロックモーター)、

同じく同社製品です。

 

社用車の場合、集中ドアロックスイッチが装着されていない場合も多く、

運転席側だけ、なにもついてないケースがあるため、

このような部品が必要になります。

 

この部品も、取付するのになかなか大変なものがあります。

 

 

気合を入れて、取付の開始です。

まずは、モーターやワイヤーの固定位置を決める作業です。

 

取付ける場所はどこでもいいわけではなく、

窓が下がった場合に干渉しない場所であるか、

モーター自体の固定場所ががっちりしているかどうか、

ドアパネルを取付けた場合、ふくらんでしまわないか等を考慮しなければなりません。

 

ここら辺の見込みが外れると、大変なことになってしまうので、

何度も仮付しながら、いろいろと考え、悩まなければなりません。

この場所決めの作業で、およそ時間は、1時間30分くらいかかります。

場合によっては、もっとかかることもありますが、

一番大事な部分であるので、慎重に時間をかけて、作業を進めます。

 

 

ちょうど、ドア内に剛性用のバーがあるため、

ドアパネルのふくらみを考えた場合、このように装着するのがベストではあるのですが、

ここの場所だと、ウインドウレギュレーターが下がってきた場合、

モーターにあたってしまい、取付することはできません。

 

このように、あっちこっちに場所を変えて、いろいろなことを考えるわけです。

 

 

いろいろ考えたところ、上から下に斜めに向かって、設置するのがいいという判断になりました。

唯一、心配していたのが、ワイヤーが、剛性用バーの上をまたぐので、その分厚みが出てしまう可能性があったのですが、実際にドアパネルを戻してみたところ、多少膨らみはあるものの、

問題ならないレベルであったので、ここから作業を進めることにします。

 

 

そうと決まれば、モーターの取付ステーを仮付けし、ステーの固定場所を探します。

 

 

この作業も、何度もドアにあてがい、ステーの長さや、穴あけの位置を確かめるためます。

ステーの長さが決まれば、切断し長さを合わせます。

 

 

それでは、穴あけを始めます。

ドア本体の要所では、電動ドリルで穴あけを実施し、

剛性用バーは簡単には穴は開かないはずなので、

車両から取り外して、単体にてボール盤で穴あけを行ないます。

 

実際、やってみると案の定、硬くて硬くて、

なかなか穴が開きませんでしたが、ここは踏ん張りどころと、

ボール盤さんに無理言って、穴を開けてもらいました。

 

 

穴をあけたところは、ボルトで固定できるようにナッターを打ち込みます。

ナッターとは、写真のような形をしたアルミ製のもので、

かさのあるほうと反対側の内側にねじがきってあるものです。

これを、専用の道具で穴に挿入し上からかしめるようにつぶしていけば、

きれいに鉄板部分に固定されます。

 

 

剛性バーにナッターを入れた様子。

がっちり固定されていますので、ここにボルト止めすることができるようになります。

 

 

ドア内のウインドウレギュレーターの回転部分、くるくる回す部分の左右にも、

ナッターが打ち込まれています。

 

実際、モーター部分等の回転部はかなりの力がはいるため、

ナッターでボルト固定できるようにするのが理想です。

 

 

モーターワイヤーの固定の様子。

これで、ぶれることなく確実にモーターが回転できるようになります。

あとは、隙間等に干渉しないようにスポンジ等で養生していきます。

 

 

次に大変な作業として、ドアロックアクチュエーターの固定です。

ドアロックの際にアクチュエーターから上下スライドする部分があるので、

ドアのサービスホールのふちにあたってしまうため、

場所を確保するために、ある程度の切り込みを入れます。

この作業も、何度もアクチュエーターをあてがい、仮付けしながら、

切断部分を決めていきます。

 

写真は切断した後の様子。

 

 

このように、裏側にあるレギュレーターとの干渉しない、ぎりぎりの部分に固定、

設置場所がかぎられるので、あらゆるケースを考え、場所を決めていきます。

 

 

ドアロックアクチュエーターの設置場所が決まれば、車両側ドアロックのロッドにかませるため、

付属のロッドの角度と長さを決めてから、形を作っていきます。

 

 

ドアロックアクチュエータにつながる、ロッドの加工したあとの様子。

微妙な曲がり角度が求められます。

 

 

サービスホール内にある金色の部分が、車両側ロッドにかませている部分。

かませたロッドの上下運動によって、車両側ロッドが上げ下げされ、

ドアロック、アンロックができるようになります。

 

 

パワーウインドウモーターと、ドアロックアクチュエーターが設置できたので、

電源を入れて、作動確認を行ないます。

無事、想像通りの動きが確認できました。

 

 

次の作業は、ハーネスをドアから車両内へ引き込んでいきます。

 

 

ここらで、作業中の様子をご案内します。

 

電装、取付関連の仕事は作業台がかかせません。

今回の加工が伴う取付作業になると、作業台が足りなくなってしまいます。

 

こちらはメインの作業台で、主に電装系統の作業に使用しています。

 

 

こちらは、加工専用の作業台です。

ここで、金属、樹脂(プラスチック系)の穴あけや切断、加工、

小さい部品等の溶接作業に使用しています。

 

 

そして、こちらは塗装スタンドを仮の作業台とし、

主に取付部品や加工に使う部材、取付や使用する材料や

工具等をまとめておくために使用しています。

 

 

話をもとに戻します。

ハーネスをドアから車両内へひきこみを行ないます。

ドアヒンジ部分のゴムジャバラ内にハーネスを通すために、取り外していきます。

 

 

今回の車両は、フロント側のタイヤハウスが、アクセルペダル周辺にある構造のため、

かなり作業がやりにくいものとなりました。

ヒューズボックスやリレー等の電装部品が装着されていて、

むやみに取り外していい部品ではないので、

知恵を絞って、このままで配線を通していくよりほかはなさそうです。

 

 

工夫のかいあって、なんとかゴムジャバラを取り外すことができました。

これで、配線を中に通すことができますが、

さて、ジャバラをどうやって戻しましょうかね。

 

 

ジャバラ内に通すハーネス。

ギボシの状態で通し、最後にカプラーを取付ます。

 

写真は、上側が運転席用で、配線が4本、

下側が助手席用で配線が3本あります。

 

何も考えないでいたり、逆に考え事をしながら作業をすると、

左右逆に通しまうなんてことは、ざらです。

いままでに、何度同じ失敗をしたことか、

苦労してようやく配線を通したあとに、あっ!となるのです。

 

 

配線通しの様子。

先に配線通しを使い、ハーネスを車両側からドアへ引き込みます。

 

 

ドア内ハーネスは、車両側から切り離しておき、

フリーの状態にしておきます。

ハーネスをドアまでもってきたら、ジャバラ内へ通していきます。

 

 

最後に、ドア側ハーネスをドアヒンジ部を通し、車両内へ引き込み、

車両側カプラーへ接続して完了です。

 

などと、簡単のように見えますが、

なかなかこれが大変な作業で、知恵と工夫と手がつる覚悟が必要です。

 

 

ドア周りの様子。

パワーウインドウモータやワイヤー、ドアロックアクチュエーターにハーネス等、

ほぼ装着ができ、完成が近づいてきました。

 

完成まで、あともう少しです。

 

 

ドア周りは、まだ細かい作業がたくさんありますが、

ここらで一旦ドアから離れ、キーレスの取付とパワーウインドウの電源系統の作業に入ります。

ようやく電装屋さんらしくなってきましたね。

 

キーレスのアンサーバック用に、ウインカー信号が必要です。

ウインカー信号の取り出しはメーター裏側より取り出します。

 

最近の車は、ウインカー信号も、どこからでも取れるわけではなくなりつつあります。

一昔前の車両では、わりと取り出しやすく、ウインカーリレー部分や、

ハンドル部分のウインカーレバースイッチから取り出しができましたが、

最近の車両では、BCM等のユニットや、メーターからでないと取り出しができなくなっています。

 

 

配線作業の様子。

運転席ハンドル下周辺での作業です。

パワーウインドウハーネスの電源の取り出しは、

キースイッチのIGから取り出すことにします。

 

配線系統の作業が終われば、今度は助手席側のモーターやワイヤーの取付、

その後に配線の引き込みと、延々と続きます。

地道に、コツコツと出来なければ、つとまらない仕事でもあります。

 

 

終わりが近づいてきました。

助手席側の作業も終わり、いよいよ終盤です。

締めはドアパネルの表側にスイッチと、ドアハンドル(クルクルまわすやつ)

のシャフトをメクラセンキャップで覆っていきます。

 

同時に、型紙を使って、スイッチ設置部分をあてがい、穴あけ作業に入ります。

 

 

穴あけ加工の様子。

メクラセンキャップの穴を大きく削りだし、

スイッチ部分の配線を通す部分に穴をあけました。

ここら辺の作業は、かなり緊張しながらの作業です。

失敗は許されませんので、慎重に作業を進めます。

 

 

運転席側ドアの完成の様子。

最後にシートを貼付て、ドアパネルを戻していきます。

 

 

ついに完成です。

運転席側ドアはスイッチが2個付きます。

片方は助手席用ですね。

 

横側にある、黒くて丸いものが、ドアハンドルシャフト部分を

覆うためのメクラセンキャップです。

以外とそんなに気になりませんね。

 

 

こちらは助手席側ドアスイッチの設置の様子。

スイッチは単独用で1個です。

 

見えない部分も含めて、アフターパーツでありながら、純正をそこなわないように施工したつもりですが、

いかがでしょうか、きれいに仕上がっていませんか。

 

 

辛く、長い道のりの旅は完了しました、

ホッとする瞬間です。

後は、安心して納車準備ができます

 いつものように、一通りの美装作業を終え、すべての作業が完了です。