· 

ミニキャブ エンジン始動せず

平成13年式 三菱ミニキャブ(U62T)のエンジンが始動しないとのことで、

人様の土俵にてハッケヨイノコッタ!です。

 

不具合症状は、キーオン時、メイン点灯、セルモーターは回るが、エンジンがかからないという状態。

初爆もないことから、エンジンに燃料がきていないのか、プラグが点火していないのか、

それらにともない、センサー等を含む、エンジンコントロール系統かの不具合が予想されます。

 

 

不具合症状を確認後、テスターを接続し、ダイアグコードが記録されているか確認のところ、

特になんのデータも記録されていませんでした。

 

これは、長い道のりになりそうな気配の中、

基礎点検から始めていかなければなりません。

 

このような場合、基礎点検とは、エンジン始動に関わる必要な条件がそろっているかの確認ということで、

電装整備でも、きわめて重要なことです。

電気系統の点検の前に、エンジンに燃料がきているのか、すなわち燃料ポンプが作動しているか、

そして、点火プラグに火花が飛んでいるのかという2点を確認していくことから始めます。

 

そうはいっても、特別難しい話ではなく、簡易点検として、給油口を開いて、クランキング時に

燃料ポンプの作動音を確かめれば分かります。

 

結果、どうやら燃料ポンプが作動していないようです。

それなら、ポンプ不具合により燃料がこないので、初爆がないのだということも予想ができますが、

念のため、点火プラグの火花も確認、

 

れれれっ、火花も飛んでいない…

 

 

それならば、見るところはまず、燃料ポンプリレーが作動しているのか、

リレーに対して、入力と出力があるのか、あれば、ポンプまでの配線系統に問題はないのかを点検します。

 

結果、リレーへの入力(コイル側、接点側)は問題なし、ポンプへの配線等も問題なく、

ポンプまでの電源まで確認できました。

 

同時進行にて、イグニションコイルへのIG電源がかかっているかの確認のところ、

こちらも問題なし。

 

それならと、ECU(エンジンコントロールユニット)への、電源系統(ここでは、バックアップ電源とIG電源、それにアース)の確認では、こちらもすべて問題なし。

 

 

行き詰ってしまいました。

もういちど、頭の中を整理し、配線図とにらめっこをしながら考えてみることに。

 

 

ECUの点検の様子。

セルがまわれど、始動しない場合、燃料がきていない(あるいは燃圧が上がっていない)、

点火プラグの火が飛ばない等で、それぞれに電源がかかっていれば、

制御系の不具合との判断になります。

 

その場合、ECU含む、センサー等の不具合(もちろん配線も)になってきますが、

テスターにてダイアグコードが出てきます。

 

今回では、そのようなダイアグコードも拾っていないので、

本当にセンサ等は問題なく、それではECU本体そのものの不具合なのかとの判断にはなってきます。

 

ですが、いままでの経験上、まず国産車にかぎっては、

ECU本体の故障には、過去2回しかありませんでしたし、

そんなに簡単に壊れるものでもないのです。

 

ここまでの点検の結果では、ECUを交換してみようかとなるわけですが、

それでは、まだ状況証拠での、消去法での判断でしかありません。

 

これだけの状況証拠があるのだから、

礼状をとって、ガラを押さえっか!と、ECUを犯人にしてはいけません。

なにかがおかしいという直感が残ってしまいます。

 

 

各種センサー等への、導通試験と、擬似信号の入力試験の様子。

ここでも、特に異常は確認ができませんでした。

 

 

これには、どう考えても、納得できません。

というのは、燃料ポンプや点火プラグの作動条件は整っていながらも、

同時に二つの電装品(ここでは、燃料ポンプと点火プラグが3本とも)が、

作動不良になるなど、偶然すぎるからです。

 

初心に戻って、もう一度点火の具合を見てみます。

やはり、火花は飛んでいない…

 

おや、一瞬、火花が散ったようです。

でもそれ以降は、何度やってもなにも確認ができません。

 

まさか…

 

 

ボディーアースを別系統にして、確認することに。

具体的には、ジャンプコードを直接、バッテリーの-側へ接続、

もう片方は、エンジン本体側での、アースのとれそうなところへ。

 

 

ジャンプコードの片方はバッテリーの-側へ直接接続。

 

ここで、キースイッチをまわしてみると、点火プラグに火花が飛び、

そのまま、エンジンが、かかってしまいました。

 

やはり、でもまさか…

 

 

車両下側から見た様子。

確かに、ボディアース線がちぎれていました。

(ミッションケースからフレーム側)

 

アース不良だったのです。

上側からプラス電源がくだってきても、下側でのアースラインが確保できていなかったので、

回路が遮断されていたようです。

 

一番最初の、不具合確認時、セルはまわっていたので、

無意識にでも、アース不良の線は、頭から消えていたのです。

 

本来、アース不良ならば、セルモーター自体がまわらないはずで、

特にこの車両の場合、ボデイとフレームにわかれているから、

アース線がきれていたら、メイン電源さえ、はいらないはずなのですが、

ここら辺の電気は、別系統のアースラインから流れていたのでしょう。

 

しかし、セルモーターほどの、大電流は流すけども、

燃料ポンプや点火プラグのアースはながさないなんて、正直わかりません。

 

結果、そのようなことが、無意識の中にあったため、

トラブルシュートの選択肢の中から、アース不良の線は、

消えていたのです。

 

 

取り外した、アース線の様子。

見事に、切れていますね。

 

 

新しいボディアース線を作成し、車両へ装着します。

 

 

もう一箇所、エンジンルーム側でのあやしいアース線を、作り直します。

 

それにしても、今回のケースで分かることは、

おかしな動作をする場合は、

アースを疑え、ということが実践されたということです。

 

確かに、通常考えられない電気系統の故障の場合、

まずもって、アース側に問題があることは、経験上、知ってはいました。

 

そして、今回でのおかしなことと言えば、

すべての電装品に対して、電源電圧がかかっていて、

それも、複数同時に作動せず、

かつ制御系統でのエラー表示等もなし、ならばECUに問題があるのかという段階まできていたものの、

簡単にはECUがこわれるものではないという、経験値から導き出された結果が、

直感として、おかしな状態であると感じたことです。

 

だから、まさかと思いながらも、

アース線をバイパスするという発想になったわけです。

 

このように、エンジン始動しないという事例のひとつを見ても、

さまざなな原因があり、いろいろなものの見方が必要とされ、

最後に、経験に基ずく直感が左右するものでもあります。

 

コメントをお書きください

コメント: 2
  • #1

    TSU (月曜日, 11 11月 2019 14:19)

    大いに参考になりました。アースの問題は厄介です。頭混乱していると時は一度離れてもう一度ですね。

  • #2

    e-arts (月曜日, 11 11月 2019 18:44)

    TSU様、このたびはコメントをいただきまして、ありがとうございます。

    当店のブログが参考になったのであれば、大変うれしく思います。
    このミニキャブの点検のときは、本当に時間がかかり、
    判断に迷ったものでしたが、ちょっとしたことで、
    迷いが確信にかわり、無事解決したことを思い出します。

    エンジン制御や複雑な電気回路の点検は、
    基礎点検を確実にしていき、ひとつひとつ確認していくことで、
    確信をもって、判断ができるようになります。

    その過程は、本当に大変なものがありますが、
    行き詰ったときは、休憩しておやつをたべるのが一番です。
    不思議なもので、見る視点が変わってきますよ。